[ パーツインプレッション: ]---------------------------------------------------------------------[top]----

これまでに試した色々なパーツについての経験や感じたこと順次紹介していきます。まずはブレーキ関係から。

1.ブレーキ

ブレーキではけっこう苦労しています。私はNSXの最大の弱点はブレーキにあると思っています。公道を走っている限り(私の走り方では)
フェードこそしないものの、峠を攻めたり、高速走行(最高速度近くからのフルブレ−キングもときどき)を繰り返すと、
すぐにローターにひずみが生じて、ブレーキジャダーを引き起こします。
91〜92年当時は毎年2、3回フロントのローターを交換していました。その後岡山県のTIサーキットを走り始めて、
ノーマルブレーキが熱的に全く使い物にならない事を知りました。TIは他のサーキットに比べても特にブレーキにきびしいようで、
TIで問題なく走れれば鈴鹿フルコース、南コース、セントラルは楽に走れるようです。
またNA1はブレーキバランスがフロントに寄りすぎているようで、前後同一銘柄のパッドを使用するとブレ−キング時のエンジンブレーキの
利かせ方で制動距離にずいぶん差が出ます。したがって私は基本的にフロントのパッドに摩擦係数の低いものを選ぶようにしています。
以下のインプレッションはあくまでも、私の走り方でサーキット走行を中心に考えた場合ですので、一般的な評価とは異なるかもしれません。

 

フロントパッド

ホンダ純正 (GPパッドではなく普通のパッド)

公道での耐フェード性は問題なし。しかしTIを2周するとフェード。それ以降は回復せず、タイムアタック不能となる。ある温度を超えると極端に摩耗が早い。たとえサーキットを走らなくても、一般道のみでもハードな走行をするとローターが歪んでしまい、ブレーキジャダーが発生。2年間で5回フロントローターを交換した。このパッドを使用していたときはリアは純正。

プロジェクトμ
NTS

かなり良かったため長期間使用したが残念ながら3年程前に製造中止。TIを2〜3周連続して走れ、多少フェードしても回復する。この点で長期的な変化(パッドによっては一度温度が上がりすぎると極端に摩耗が早くなったり、摩擦係数が落ちたりする)が少ない。摩擦係数は低めであるがNSXのフロントにはリヤとのバランスがとれるので良かった。耐磨耗性は極めて高く、サーキット走行を4〜500kmできるほど。一般道でも純正の2倍近い寿命であった。タッチは固めの印象。鳴きはわずかにあり。(もっともNSXではどのパッドもほとんど鳴いたことがない。)ローターの歪みも発生しなかった。3年間で6セット程度使用した。総評としては耐フェード性が少し低いことを除くとベスト。リアには最初純正、後に同じくプロジェクトμの#3000を主に使用。 

プロジェクトμ
#5000

NTSが製造中止になった後、メーカーのお薦めにより使用開始。乗った感じはNTSによく似ている。(メーカーの営業は最初「中味はおなじものです。」と言っていたが、どうしても信じられず、後にメーカーの技術に確認したところやはり材質が異なっていた。)効きは同程度であるが一度温度が上がってから後は少し摩擦係数が落ちる。TI数周でフェードはするが効きが悪くなる程度で極端ではない。冷やせば回復。セントラルなら10周連続でも何とか走れる。NTSと大きく異なる点は耐磨耗性で、寿命は半分程度。ローターの歪みはわずかに発生したが、一応ローターが薄くなって割れるまで使えた。総評としてはまずまず。寿命が不満ながらNTSに続くスタンダードになった。

プロジェクトμ
HCチタンKAI

摩擦係数は比較的高く、純正より少し低い程度。TIなら2〜3数周は走れるものの、その後に来るフェードが結構きつく、少し驚く。メーカーの謳い文句どおり回復はする。ただし一度温度を上げてからの耐磨耗性は低く、すぐに摩耗してしまう。また摩擦係数も大きく下がる。寿命評価としてはTIで50周程度と短い。もう一つの問題はローターの歪みが出やすい点。フェードとローター歪みの点は他のNSXオーナーからも最近聞いた。値段も安くないため総合評価は低い。

エンドレス RH
(レーシングハードと
称するレース専用品
カタログモデルではない
らしいが、
一般のショップで購入可)

各メーカーにサーキットを500km走れるパッドはないか?と尋ね可能との返事が返ってきたのがこのパッド。(プロジェクトμではないとの返事、住友電工はCSタイプなら可能との返事でこれは現在テスト中)摩擦係数は低温から高温までこれまでに試したパッドの中で一番低い。ただし#5000との差はわずか。低温時に少し滑るような感覚があるが、取り立てて問題にする程度ではなく。慣れれば気にならない。心配したほど温度による効き味の差はない。もう少し効きが強い方がコントロールはしやすいが、タッチは硬めで感触は良い。鳴きはなく、ダストも少ない。ローターの削れ方は少し多いような気もするが、歪みは出なかった。特筆すべきは耐フェード性でTIやセントラルを走っても、全くフェードの兆候もなかった(通常はどのパッドも一度多少の初期フェードが出たがこれは全くなし)。リヤにAPロッキードのZCを組み合わせた状態では、前後ローター温度がほぼ同じでバランスは理想的(?)。寿命については非常に長く、実際に公道3000km、サーキット走行を3〜400kmを行いまだ半分近く残っていたが、一部割れて剥離していることが判明したため、使用を中止。残念!ともかくこれまで使った中ではベストのパッド。

以上のフロントパッドインプレッションを表にすると下のようになります。総合評価はフェード、ローター歪、寿命を重視して決めています。なお寿命については全てのパッドで十分な距離のサーキット走行を行っているわけではなく、公道の走行も含めた寿命をサーキット走行に換算したらこの程度だろうとの推定値です。

 

比較表
メーカー (ホンダ) Project μ Project μ Project μ エンドレス
型番 純正 NTS 5000 Ti-kai RH
μ低温 5 3 3 4 2
μ高温 3 4 4 3 5
フェード 1 3 4 2 5
ローター歪 1 5 4 2 4
ローターの減り 4 3 2 2 4
ホイールの汚れ 4 2 3 3 4
タッチ 3 4 4 4 5
寿命
(サーキット走行可能距離)
2
(200km)
4
(500km)
3
(300km)
2
(200km)
4
(500〜700km)
総合 2 4 3.5 2 4.5

 

[ リヤパッド ]-----------------------------------------------------------------------------------------

リヤについてはフロントほど詳しい評価はできません。利き方やフェードの仕方などは単独では良くわからないことが多く、
フロントパッドとの組み合わせがどうか、ぐらいしかわからないのが本音です。

ホンダ純正

当然のことながら摩擦係数は低温から高く、この点は好ましい。ただしフロントの耐熱性を改良して周回を繰り返していると、ある温度を越えたところで、一気にぼろぼろになる。表面だけでなく全体が炭化して、粉々になってしまう。新品のパッドが1回のサーキット走行で完全になくなったこともあった。

プロジェクトμ
#3000

プロジェクトμのお薦めにより、これをフロントにNTSあるいは#5000と組み合わせて使用。以前のスタンダードにしていた。たしかに前後ノーマルよりも少しブレーキバランスが後ろに寄った感じ。寿命はサーキット走行300〜400km程度

プロジェクトμ
#2000

これもフロント#5000と組み合わせて使用。#3000よりももう少しブレーキバランスが後ろ寄りになる感じ。ただし温度が上がりすぎるためか、あるいはパッドの耐熱性が低いためか、寿命は短い。#3000の半分程度。

プロジェクトμ
HCチタンKAI

フロントにチタンKAI、エンドレスRHと組み合わせて使用、摩擦係数は#3000程度か?ローターの磨耗が大きい印象。寿命は#3000より少し短かった。

APロッキード

エンドレスRHと組み合わせて使用。摩擦係数はかなり高め。純正並か?ローターの減りがかなり少ないことが特徴。耐熱性も悪くなさそうで、寿命も#3000の2倍程度と長い。現在のスタンダードになっている。フロントにも一度使ってみたい気もするが、摩擦係数が高すぎて私の好みから外れそう。

なお私の車はブレーキキャリパー、ローターともノーマル(NA1)。パッド以外は、ホースがステンレスメッシュ、
マスターシリンダーストッパーとタイプR用ローターカバー(通風口付き)だけが変更点です。

パッド以外のパーツ
R用ローターカバー 正式名称はフロントスプラッシュガード。1枚4250円のパーツですがこれはかなり効果があります。具体的にフロントパッドNTSリヤパッドノーマルで走っていた時代に、このパーツを変えただけで連続して走れる週回数が増え、先にフェードするのがフロントからリヤに変わってしまったほどです。お薦めの一品。
ステンレスメッシュ
ホース
これは極めて一般的なパーツ。普通に走行するにはあまり違いがわからないが、温度が上がってくるとスポンジーな感じになるノーマルに対し、これを完全に防いでくれます。
マスターシリンダー
ストッパー
ポルシェのようなカッチリしたブレーキに憧れ、色々調べたところマスターシリンダーの動きがかなり大きいことが判明。当時は市販品がなかったためこれを自作。10mm厚の極厚アルミ板を使用して作成し、可能な限り剛性の高い設計としたのですが、理想的な取り付け方が難しく、完全とは言えない出来になりました。それでも元の状態に比べて半分以下の動きにはなっています。踏んだ感じではノーマルとの違いが十分に体感できます。現在はプロジェクトμ等から販売されているようで、そちらはもっといいかも。

 [ エキゾーストマニホールド ]---------------------------------------------------------------------------

ずっと以前から交換したいと考えていたパーツ。ノーマルエキマニは鉄の鋳物の塊で、どう見ても排気効率が悪そうなもの。
一度じっくりと見てからは、これは何とかしなければいけない、という思いがさらに強くなりました。
インターネットから選んだ購入ルートはフロリダにある Nippon Power というショップ。
ここでのNSX用エキマニの価格は約1250ドル。当時(1999年9月)の為替レート($1=105円前後)では
輸送費や手数料を払ってもかなり安くつきます。

このショップに購入希望のメールを送ると、日本の車のパーツをわざわざアメリカから購入すすことをひどく不思議がられました。
購入を希望していること自体を信じてもらえていないようです。日本での一般的な販売価格を伝えると、驚きながらも納得してくれて、
いろいろメールのやりとりが始まりました。やはり30万、40万という日本での価格は異常なんでしょうか?
まず最初に問題になったのは国内向けNSXと輸出用との排気系パーツの違いでした。
先方の話では日本国内向けと輸出用ではエキマニの形が違っているはず、とのこと。いろいろ調べたところ、
北米向けは95年以降触媒の形が変更になっていることがわかりました。つまり90年から94年までは国内向けと北米向けは共通、
95年からは北米向けだけが排気系のマイナーチェンジを受け、国内向けは変更無し、その後NA2になってさらにどちらも
変更されたとのことでした。
さらにもうひとつわかったことは、DCスポーツのエキマニが途中でマイナーチェンジを受けていること。
元々はフレキシブルパイプを持たない単純なパイプのみで構成され、日本の雑誌ではその写真が紹介されていますが、
インターネット上の最新の写真は触媒近くのパイプが蛇腹状になっています。
これは振動によるクラック対策で途中から変更されたそうです。

次の問題は支払方法。ここを含む多くのショップでは、米国以外からのクレジットカードによる支払いができないため、
どのように支払うかが意外に難しい事がわかりました。
先方に聞いても、wire money やら cralified check やら辞書を引いても分からない単語が続出し、
結局先方の銀行口座を聞いて、そこへ振り込むことに。振り込み手数料を7000円も取られたけれど、
$1=107円の為替レートで支払いを済ませました。この時点での支払い総額約16万円(輸送費約$200含む)。

発注が完了し、後は届くのを待つだけです。納期についてはこの年式のパーツは在庫がなく、受注生産になるとのことで、
1ヶ月と聞いていました。ところが、これがなかなかできてこない。1ヶ月のところが2ヶ月、3ヶ月と待ち、
4ヶ月半かかってようやく自宅に送られてきました。この間は不安でしたが、幸いにもショップの担当者がときどき
状況をメールで伝えてくれたので何とか辛抱して待つことができました。
エキマニが完成してショップに届いてからは見事なスピードで輸送されていきます。輸送にはUPSを使いましたが、
インターネットで自分の貨物が現在どこにあるかがリアルタイムで確認できることをこのとき初めて知りました。
アメリカ出国まで1日、その翌日には日本到着。通関を含めても自宅までわずか3日間でした。
上記以外の出費として日本国内での消費税が数千円。トータルで17万円弱で入手できたことになります。

納期の長さとリスクを考えると、お得な買い物と言えるかどうかは疑問が残りますが、
いろいろ勉強にもなったので、まあ良かったと言えるでしょう。

[インプレッション]---------------------------------------------------------------------------

さて、入手したエキマニは見た目とてもきれいに仕上がっており、パイプの繋ぎ目は外側も内面も滑らかで
アメリカ製とは思えない(?)丁寧な作りのものでした。エキマニに付けるO2センサーはノーマルの位置
(エンジンのすぐそば)から遠く離れた触媒のそばまで移動してあります。そのための延長ケーブルも付属していました。
おそらくノーマルより高温(?)になることでセンサーが壊れやすくなることに対する対策なのでしょう。
これを近所のショップでかなり苦労して装着してもらい、ついでに触媒もはずしてみることに…。
したがって以下は(エキマニ+触媒レス)のインプレッションになります。
エンジン関係のチューニングパーツはその効果をあまり体感できないことが多いのですが、
これは車を動かした瞬間に違っていることがわかります。一番大きく違うのはまず排気音で、
アイドリング時の音は少し大きくなっただけですが、アクセルを踏むと回転が上がるにつれ甲高い、
やたら大きな音がします。音量は元の2〜3倍はあるでしょう。トルクについても誰が乗っても瞬時に分かるほどの違いがあります。
意外なことに低速トルク、それも1500RPM付近から5000RPM付近のトルクがかなり上がりました。
体感的にはNA2に乗ったときのトルク感と同じような感じで、今まで4速で走らせていたところを
5速で走っても不満を感じない程度。あるいは今まで2000RPM以下はほとんど使う気がしなかったものが、
1500RPMまで実用域になってしまったほどです。高回転側もトルク上昇をはっきり感じ取れる程ですが、
低回転側ほど劇的な違いではありません。この異常な(?)低回転側のトルク上昇感はおそらく私の車の
マフラーやエンジンの特性との相乗効果で、負荷がかかったときのエンジン音や振動あるいはレスポンスの向上が
数値以上に体感トルクに大きく影響しているだろうと思います。アクセルを踏み込んだときにエンジンが即反応し、
そのときの音や振動から苦しそうな感じがなくなれば、きっとトルクが大幅にアップしたと感じるのでしょう。
今回の交換によって得たパワーの実測値は約7PSでした。この数値から推定すると、
おそらく実際のトルクは1〜2kg/m程度しか上がっていないでしょうから…。
ともかく、実際のパワーも上がり、体感上はそれ以上に気持ちのいいエンジンになった点で
このパーツは十分な価値があったといえるでしょう。