[エンジン換装 : ]---------------------------------------------------------------------[top]----

1)トラブル

98年5月、11万km走行してもまだエンジンの調子は上々。
つい先週も最高速テストをして、270km(後付のデジタルピークメーター読みで276km/h;メーター誤差は2%)
きっちり出たことで、パワーが未だ衰えていないことを確認したばかりでした。ちょうどこのとき友人と二人で
「これだけ頻繁にめいっぱい回して、いまだに新車のとき以上のパワーが出せるとは、ホンダのエンジン技術はすごいな」
「でもきっとそのうち突然ぽっくりご臨終になるな
」と冗談半分で話し合っていました。それがすぐに現実になろうとは…。

 場所はセントラルサーキット。走行会に参加し、数周したところでコーナリング中にエンジンの回転リミッターが効き始め、
高回転が使えなくなりました。ストレートでは問題なく吹き上がるのに特定のコーナーに入ったときだけこの症状。
ペースダウンしてメーター類をチェックしても燃料は十分、水温、油圧も正常、もちろんTCSは切れています。
油量の警告ランプも点灯していません。しばらくは早めにシフトアップして高回転を使わないようにしながら走行を続け、
ピットに帰ろうとしたとき、何やらエンジンからガラガラと大きな音が…。
ピットに到着後、すぐにエンジンを止めたところ、あっという間に水温が上昇。オイルをチェックすると
ゲージに付くか付かないか程度しか入っていません。オイルを足しても症状はかわらず。自走で帰ろうとしたものの、
音がだんだん大きくなりとうとうエンジンがストップし積車を呼ぶことに。そのままディーラーへ入院することになりました。

 

2)修理

オイルパンをはずし、エンジン下側からクランクシャフトを調べてもらった結果、クランクとコンロッドのメタルが摩耗しきって、
一部クランクシャフトとコンロッドの摺動面が削れてしまっている状態。
ガラガラ音の正体は摺動面のクリアランスが大きくなり過ぎ、コンロッドが振れてクランクシャフトのカバーに当たっていた音でした。
磨耗の原因はおそらくオイルの量が少ない上にコーナーのGで油面が偏ったこと。
修理するにはピストン、コンロッド、クランクシャフトをすべて一式で交換する必要があり、
その費用は何と部品代だけで60万円とのこと。それなら比較的新しい中古エンジンを探して換装する方が良さそうだということになりました。
新品の
3.2Lエンジンに変えることも考えたのですが、ドライブバイワイヤーをはじめ、エンジンマウント等、各部が違うため大変とのこと。
何より現在は受注生産のため、たとえ
3Lのエンジンでも以前のようにエンジン単体をラインから引っ張ってくることが簡単にはできないそうです。
そんなわけで中古エンジンを探し始めました。まずインターネットで解体部品に関する情報を探ってみると、
全国で
3つの大きな情報ネット(BIG WAVE、NGP、UPIC)があることがわかりました。
それぞれに連絡をとって検索してもらい、MT用
2基、AT用6基のエンジンを発見。価格は35万円から50万円程度、
走行距離によって違うようで、さらにMT用はAT用より
10万円ほど高いようです。
このときのMT用はどちらも
7万km以上走行していたため、1.5万km走行のAT用を選び、
カムシャフト等の部品は元のエンジンのものをそのまま使うことに。ちなみにエンジンの価格は
40万円でした。
さて晴れて退院してきた車に乗った感想は、と言うと、これが換装前の状態とそっくり。
少し滑らかに回る印象はありましたが、パワー感や高回転での吹き上がり方は全く変わらず。
最高速も測ってみましたが前と全く同じ。まあこれはこれでホンダの技術が優れている、ということなのでしょう。
ただしエンジンを組むときにフライホイールを軽量化したのですが、こちらの効果はありました。
空ふかしのときの回転上がりが良くなったのもさることながら、それ以上に回転落ちが早くなったため、
早いシフトアップがスムーズにできるようになりました。これはすごく快適です。
一般に言われるような、アイドリングがラフになる、低速トルクが落ちるなどは感じられませんでした。

[ヘッドのチューニング : ]-------------------------------------------------------------------------

1)シフトミス
99年8月、それはTIサーキット走行中の出来事です。真夏のサーキット走行ということもあって、
少し全開走行をしてその後クールダウンというパターンを繰り返していました。
クールダウン中あまり集中せずスタンド前を通過、さあこれから全開というときに、
何も考えず条件反射的にダブルクラッチを踏み、4速から2速にシフトダウンをしてしまったのです。
スピードは130km以上出ていたのに…。クラッチをつないだ瞬間異変に気がつき、反射的にクラッチを切りましたが、後の祭。
タコメーターは9000回転を越えて回っていました。う〜ん、よりによってこんなばかばかしいシフトミスをするとは…。
ところが、その後もエンジンは今までと全く変わらず調子良く回っています。加速は衰えず、特に変わった様子もありません。
走り慣れたサーキットなのでパワーダウンがあればシフトポイントが変わってすぐに分かるはずです。
(実際、後でラップタイムを見るとほとんど差がありませんでした) ラッキー!!そのまま全開で3周ほど走り、
再びクールダウンしようとして回転を落とし、クラッチを切った途端にエンスト。やっぱり、さっきの…。
再びエンジンをかけると低回転はばらついていて、回転を上げていくときれいに回るようです。
この時点ではオーバーレブが原因でバルブを突いたのかどうか、半信半疑ながら、そのまま自走して西宮のディーラーまで持っていきました。

2)チューニング
圧縮を測ってもらうと、やはり1本のシリンダーが異常に低い値でヘッドのオーバーホールが必要とのこと。
この際、どうせオーバーホールするのなら、以前から興味があったヘッドのチューニングをしてみることにしました。
自宅からさほど距離のない所に、シビックレースのエンジンチューンを得意とするショップがあり、
そこでNSXも何台かチューニングした経験があるということを以前から聞いていたので、ここにまかせることに。
そのショップのチューニングメニューは、項目的にはホンダツインカムが雑誌広告で宣伝しているものとほぼ完全に同じ。
両者には何の関連もないのですが、結局NAエンジンのチューニングは、常道を行けば行きつくところが同じになるのでしょう。
その内容は、ヘッド面研により圧縮比を少しアップ、吸排気ポート研磨、インテークバルブを3.2L用ビッグバルブに交換、
吸排気バルブシートをカット、プラグを1番冷え型に交換、といったところです。
どれだけ圧縮を上げるか、ポートの形状をどう仕上げるか、バルブシートの形状はどうするか、
といったところに各ショップがレースで経験してきたノウハウがあるそうです

3)インプレッション
仕上がってきた車を試乗した結果は、低回転領域では体感上変化がわからず、5000〜6000回転から上は元気になり、
特に7000回転を越えてからリミッターまであっという間に回るようになった感じです。
チューニング前後でシャーシダイナモにかけて測った結果では、上がったパワーは約10PS程度。

ここまではいいのですが、これにともなう(かもしれない)トラブルも出ています。

まず1週間後にサーキットを走った直後、O2センサーのヒーターが切れたこと。
排気温度が従来より上がったためとも考えられますが、よくは分かりません。
これは今年3月エキマニをタコ足に交換したときに修理。それ以後は切れていません。
次にアイドリングが若干不安定になったこと。どうもヘッドの面研によりバルタイが微妙に変化しているので、
アイドリングの負圧が変化し、燃調が少し狂っているようです。ごくまれに、発進時エンジンがストールすることがあり、
これも燃調が絡んでいるようです。NSXはアイドリングの燃調を調整するところがなく、
CPUが供給燃料の量を決めているため、本来なら現在の状態に合わせてCPUのROM書き換えをすべきようです。
特に大きな問題ではないため、これからROM書き換えについては、じっくり対応していくつもりです。